2月に入ってからは某CM音楽の制作をしていました。
メジャーな感じのCM音楽制作は初めてでしたので、制作統括サイドからの依頼の感じや自分自身の制作の流れなどにテンパる部分もありましたが、とりあえずひと段落しましたので手記としてまとめておこうと思います。
企画が始動した当初は、逆の立場(楽曲を選考する立場)になってみる余裕がありませんでしたので、そこがまず反省する点。おそらく今回、特定の音楽ディレクター(※1)のような方が不在だったようでして、次からはその点も含め早い段階で把握しておくのがよいと思いました。
そういうわけで、何度かに渡って合計7曲のデモ音源を提出しました。
最初の数曲は、依頼時にうかがった情報(依頼主さまの音楽的好みや商品のセールスポイント、プロモーション活動の方向性など)をもとに、EDM路線に絞って、その範囲に近いジャンル感のものを提出していきました。
その後、「いろいろ幅のある楽曲から選びたい」という要望を受け、「確かにそうだよなぁ、エスパー的な以心伝心でもない限り決められないよなぁ」と納得しまして、今度はジャンル自体にバリエーションを持たせた5曲を提出しました。
結局、採用が決まったのは当初イメージしていたEDM路線とはかけ離れた感じのジャンルになりまして笑。ですが「こういうジャンルはいかがですか?」という音楽家らしい提案ができて、それが受け入れられたというのは冥利に尽きるといいますか嬉しかったです。好きなジャンルでしたし。
最後にその決定した方向性で3パターンのデモを作り、決定した1パターンを清書して完了です。……完了なはずです。
先ほど「音楽ディレクター不在の状況」と書きましたが、こういう場合は音楽プロデューサー(※2)がディレクターを兼任するわけだな、と思い、最後に提出した5曲を制作する際には次のような行動に出ました;
1: 共有したイメージから3つのジャンルで制作することを決める(←これまでの音楽経験とスキルを適用できたのはこの段階まで)
2: あと2つが出てこなかったので、前提となっているテーマ(ダンスミュージック)というくくりで家にあったCDをあさる
3: 商品CMを妄想しながらCDを聴きまくって、雰囲気の合いそうな曲をいくつかピックアップ
4: 2曲に絞ってそれを参考曲として制作する
要は(やはり)パクるということです。実際にはコード進行や展開は変えますしメロディーも違うのであくまでオリジナル曲なのですが、時間の無い制作過程において迷うことがないようにインストルメンテーション(楽器編成)や音色を真似るという感じです。
DTMの制作で一番厄介だと感じることの1つがこの「音色選び」だと思うのですが、上記のような作業をすることで時間的効率が良くなる上に、制作者としての知識レベルも向上することが期待できます。
アーティスト気質の強い方にとってはなかなか受け入れがたい方法かもしれませんが、自分のスキルアップのためにも、オリジナル楽曲を制作する際にはまず方向性の参考となる既存の楽曲を探すところから始めるのがいいように思います。真のアーティスト性というのは、そうして当然の完成度を確保した前提で、なお残りうるもの、輝きうるべきものだと考えています。そしてそんな理屈をどうこう考えているうちは真のアーティスト足り得ないとも思っています笑。
※1:「音楽ディレクター」は、「このアーティスト(番組・ドラマ・CM)にはこういう楽曲が合う」というようなことについて頭を悩ませる人のようです。幅広く音楽を聴いていて、かつ、それぞれの音楽がビジュアル的にどういう場面にフィットするかなどを知っていなくてはできないような気がします。最も音楽ファンであり、最もリベラルである人という印象です。
※2:「音楽プロデューサー」は、純粋な意味で楽曲そのものの制作を担当する人のようです。つまり順序的には音楽ディレクターの指示を受けてその通りに制作する人なのでしょうが、今回のような場合に限らず、音楽ディレクター的な能力が必要となってくる場合が多い気がします。
木曜a.k.a.まえのめり@48kHz