振り返ってみれば、ぼくが作家事務所内で実力を認めてもらえるようになって、コンペも決まるようになって、音楽制作で安くはないお金をいただけるようになって、ここまで音楽を続けてこれている、という一連の流れの要所要所で、業界標準となるようなプロフェッショナル音源を徐々に導入していきました。良いプラグイン音源を導入するたびに、作る楽曲もレベルアップしていった、という感想です。
現代の音楽制作においては、音楽知識や作編曲技術はもちろん大切ですが、それと同じく、あるいはそれ以上に、プロの音になる音源を持っているかどうか、が重要だと思います。技術より以前に、まず持っているか持ってないかだ、ということです。
ミックスする際にはあくまでProToolsにこだわることや(筆者は近年は打ち込みもProToolsです)、モニター用ヘッドホンがSony MDR-CD900STなことや(Shureに転向して以来まったく使ってないけど)、歌録音のマイクがノイマンなことなどと同じく、プラグイン音源を購入する決め手は「プロが使っているから」「業界標準のようだから」で十分でしょう。
とはいえ、プラグイン音源は安い買い物ではないので、ある程度の予算があったとして、何を優先して購入すべきか迷うところだと思います。
そこで、実体験をもとに、まず揃えたい音源について考えてみようと思います。
前置き長い。
一番大切な音源は歌!
歌モノポップスという前提ですと、一番大切なのは歌ですね。曲やアレンジが多少ショボくても、歌が良ければ聴きたいと思うものではないでしょうか。いきなりプラグイン音源じゃないですが… …。
良いボーカリストとお近づきになるためには、行動範囲を広げることが大切です、というのは分かっているけど基本仕様がひきこもりという、ぼくのようなDTMerにとってはハードルが高いすね。
自分の場合はバンド活動をきっかけにして知り合いが広がりましたが、仲の良い同業者に紹介していただくことも多いですので、とにかく人の縁を大事にすることが重要だと思います。
ドラムがトラックの第二の顔!
次に重要なのはドラムなどの打楽器類でしょう。小さい音量から大きい音量までの幅が広く、楽曲の派手さやダイナミクスに最も影響を与えるため、音質の良し悪しも特に気になるパートだと思います。
Omnisphere と同じ Spectrasonics の打楽器音源で Stylus というのがあって、ぼくの場合は Omnisphere 、ベース音源の Trilian との3点セットでセールしていたものを購入しましたが、 Stylus は全ての音色がステレオになってしまうという欠点があったため、ぼくはここぞというところではやはり、打ち込み系のジャンルであっても、以前ご紹介した toontrack EZdrummer を使っていました。間違いない。
ぼくも、もう10年以上前になるでしょうか、それまで Propellerhead Reason のみで楽曲制作をしていたところ、まずEZdrummerに変更しましたが、ドラム音源が変わっただけでいきなり商業っぽい楽曲に変身したことに感動したのを覚えています。
必要十分過不足なき、基本的かつ本格的な最強のドラム音源。
軽音楽の花形:ギターにはこだわりたい
ベースは、まあなんでもいいかな、と思うんですがどうですかね(笑)。低音が鳴りさえすれば、あとはエフェクトプラグインでもなんとかなりそう、という。目立つ音、ということでいえば、やはり歪み系のギターでしょうか。がっつり入れてパワフル、薄くいれても迫力の演出になり、なんといってもポップス系のあらゆるスタイルの楽曲との親和性が高いですよね。
ギター音源は長きにわたって「やっぱり生で弾かないと」という、非ギタリストDTMerの鬼門みたいな感じでした。ぼくも長いこと、下手なギターを頑張って録音していました。
そもそも、ギターだけ録音、というのは、のちのちキー変更などの依頼があった場合に対応しにくいですので、職業作曲家としては気が乗らない、ということもあります。
でも、最近まったく弾かなくても大丈夫になりました、その原因が Prominy V-Metal の登場です。メタル、というかロック系ギターの奏法に限定することによって、その方面では過不足ない表現を収録した、とても自然な音源です。よく「え、あれ打ち込みなんですか?」って言われます。使用率9割くらいです。間違いない。
ロックギターの表現をリアルに再現できる特化型音源。
アコギ音源選びは難しい
ロック系の歪むギターは Prominy V Metal でOKとして、他にもファンク系カッティングやアルペジオなど、ギターの表現は実に多彩です。
そのため、それぞれに専念した音源が各社からいろいろリリースされています。なかなか1つで全てをカバーできないのが難しいところ。
まあ、アレンジの技術が多彩になってくれば、「カッティング欲しいけどいい音源がないから、入れずになんとか聴かせるアレンジにしよう」という選択もできるようになるかと思います。
ただしアコースティックギターは別ですね。音自体がエレキとは大きく違いますので、あの雰囲気を出すためにはアコギ音源が必須だと思います。
アコギも大きくわけて、ストローク(ストラム)と、アルペジオなど含む単音弾きという2種類の大きく違う奏法があります。それぞれ得意としている音源がありますのでいくつか所有したいところですが、両方になかなかのクオリティで対応できるおすすめ音源が AMPLE SOUND の AMPLE GUITAR シリーズです。
サンプリング元のギターのモデルによって「T」とか「M」とか名前がついていますが、各奏法に対応するという意味ではTaylorをサンプリングした AMPLE GUITAR T が良いと思います。
アコギ音源 AMPLE GUITAR T III の公式サイト
ソロでも耐えられるピアノ音源はマスト
あくまで自分の場合の話かもしれませんが、楽曲数的に最もよく制作するのがピアノ中心の、またはピアノだけの、楽曲です。
定番のバラード系ポップスはもちろん、「劇中の泣きのシーンでテーマ曲のピアノインストバージョンが欲しい」「ライブ終盤のトークコーナーで感動を誘うしっとりしたピアノソロ曲が欲しい」「人気曲の別アレンジでセットリストに変化をつけたいので弾き語り風のオケが欲しい」など、たしかに需要が多そうなイメージです。
最近のプラグイン音源では、どのピアノ音源もほぼ、高級グランドピアノの音色をサンプリングしていますが、やはり中でもダントツの音質を誇っていると思われるのが Synthogy Ivory です。全88鍵盤を、ベロシティに応じて最大18段階収録している、という並々ならぬ本気度のサンプリング音源で、現状のIvory II になって以来、かれこれ10年近くバージョンが変わっていません。つまり、すでに行きつくところまで行きついた、ということなんでしょうか。王者の風格。優勝。間違いない。
ピアノ音源の決定版。もう迷うことはない。悩むことはない。
これひとつで最新シンセ音色を網羅:Omnisphere
Omnisphereについては以前記事に取り上げましたので、リンクだけで細かいことは改めて語りません。
その後、2にして使っていますが、プリセットライブラリーの数がえらいことになりました(笑)。
最新の楽曲に対応したようなシンセ音色が網羅されているのは2になって一番の特徴ですね。
Omnisphereがあれば、エレピ、オルガン、ストリングス、パッド、シンセなど基本的な音色をカバーできます。ギターやアコースティックピアノについては、なんか特殊な音色しか入っていませんので、それらの基本的な音色が必要なら別に用意する必要があるかと思います。
久しぶりにアップデートした2は現代のポップスに必須のエッセンスが満載。
・・・長かったですがここまでです。お役に立てれば嬉しいです。