実際のプロの現場のレコーディングは、歌い手の他にも、音楽プロデューサーや歌唱アドバイザー、レコーディングエンジニアなど複数の人が立ち合って進めていきます。
そのため、レコーディングの手順やマナーも、そういった関わる人全員にに配慮したものになっています。
ですがここでは、すべて自分でやるという前提ですので、必要なことに絞って説明していきます。
□ ボーカルの入力レベルを決める
□ ボーカルの音とオケの音のバランスをとる
□ いざレコーディング!レコーディングの最中にも気を付けることがあります。
□ あとはDAWの操作が大事!(こちらは次回です)
ボーカルの入力レベル
・「絶対に音割れしない!」ことだけを考えましょう。
・波形ではなくメーターで判断しましょう。
何度か試し録りをしてみて、またはDAW上のピークメーターを注視して、ベストな設定を決めていきます。
ボーカルの入力レベル(録音されるボーカルの音量)は、「割れない程度に、できるだけ大きく」が基本とされています。
「音が割れてしまう」のは絶対にNGですので、曲中で声が大きくなる箇所(サビなど)で想定している最大音量よりも多少の余裕をもって、割れないように入力レベルを調整しましょう。サビで音割れしているデータを送ってくる方がけっこういらっしゃいます。
「できるだけ大きく」ですが、これは、小さすぎる音量で録音してしまうと、相対的に電気ノイズなどが含まれる割合が大きくなってしまうため、その割合をできるだけ小さくしたい、ということになります。くわしくは「S/N比」というワードを検索ください。
ただし、デジタルデータで音を扱う現代においては、そのノイズもあまり気にする必要がなくなってきているようです。
また、あまりギリギリの大きい音量で録音してしまうと、それ以降に音を調整していく中で、上(ヘッドルーム)に余裕がなくて扱いづらい、という問題もあります。
そういうわけで、「できるだけ大きく」については、個人的にはあまり気にせずとも大丈夫かな、と考えています。
それよりもなによりも、「絶対に音割れしない」ということに全神経を集中させていただきたいと思います。
また、DAWの波形の幅をみて音量を判断することには注意が必要です。
多くのDAWでは波形の表示サイズを調整できるため、あまりアテになりません。
ざっくりで良いので、音量メーターの動きに注意しながら入力レベルを決めるのが良いでしょう。
オケとのバランス調整
・オケの音量は大き過ぎも小さすぎもNG。
ボーカルの入力レベルが決まったら、次はそれをふまえて、カラオケの音量を決めます。
レコーディング中にモニターするオケの音量はバッチリ合わせる必要があります。
まず前提として、多くのオケ音源は、そのままレコーディングで使うには大きすぎます。-10db とか -20db とかは当たり前のように下げます。
オケが大きすぎると、
□ ヘッドホンから音漏れしてマイクに音が入ってしまう
□ 歌の細かいニュアンスに注意がいかなくなる
□ 歌データに入ってしまった突発的なノイズなどを聞き逃してしまう
といったデメリットがあります。逆にオケが小さすぎると、
□ オケに合わせて小さい声で歌ってしまう
□ リズムが聴きとれず、歌のリズムがずれてしまう
というデメリットがあります。
「ちゃんと曲にのって気持ちよく歌える十分な音量で、できるだけ小さく」が理想、ということになるでしょうか。
ちゃんとしたエンジニアのいる環境では、ノイズや歌のニュアンスやリズムに注意を払うのはエンジニアの仕事ですので、歌い手は「ただ気持ちよく歌える」ことに集中すればよいということになります。
そういう意味では、自宅レコーディングにおいても、とりあえず気持ちよく歌って、プレイバックのチェックを入念に、というのが理想かもしれません。
ただ、慣れないうちはいくら入念にプレイバックをしても何かを聴き逃してしまうものですので、やはり「安全第一」というのが個人的なおすすめです。
レコーディングの最中に気をつけること
・ 1曲のレコーディング中に、音が変わってしまう行動をとらない!
□ 最初に決めた入力レベルを変えない
□ 歌っている立ち位置・顔の向きを変えない
□ その他、録音にかかわる機材・ソフトウェアのパラメータを変えない
よく、「サビの声が大きくなってしまうので、サビだけ少しマイクから離れたい」ということがありそうですが、第三者として音を判断できるエンジニアが立ち合わない限り、おすすめしません。
そうなると、逆にどうしてもAメロなど曲が比較的おとなしい箇所は小さく録音されてしまいますが、やむを得ないと考えます。
賛否あるかもしれませんが、曲中で音質が変化してしまうリスクを回避することの方を優先すべきでしょう。
どうしても一度にレコーディングできず、部分的に別の日に再開する、という場合もあると思います。
そのために、機材セッティングやレコーディング環境などは詳細にメモを残すようにしましょう。
ここまできたら、あとはDAWを操作しながらテイクを重ねていくのみです。次回は動画とともに、レコーディング特有のDAW操作についてお話します。
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