ピアノソロ曲の適正な音圧を探ってみました

ピアノソロ曲を作ったので仕上げようとしましたところ、書き出す際の音圧をどのくらいに設定すべきか迷いました。

共通認識としまして、ここでいう「ピアノソロ曲」というのは、ドラマのサントラに含まれるような、主題歌のピアノバージョンみたいなアレンジの曲のこととします。よくあるやつだと思います。

課題のポイントは「歌なし。音色ひとつ。」

ポップス作品で定番の「RMS値-9.0前後」をもとに設定しますと、ボーカルはおろか楽器も少ないため、ピアノの音だけ異様に圧がある変な音響となってしまうようでした。

ということで、この機会に、「ピアノソロ曲の仕上げをマスターしよう」とウェブを当たってみましたが有力な情報は得られませんでした(検索の仕方?……)。

今回はピアノソロ曲のマスタリングまでの過程について自分なりの答を出そう、という試みです。

事前の知識と仮説

まず経験として、ピアノソロではなく「ボーカルが入っているピアノ弾き語り風の楽曲」の場合は;

  1.  ピアノとボーカルをいい感じのバランスでミックスする
  2. ボーカルが、ふつうのボーカル入り楽曲(ドラムもベースもコード楽器も入っている楽曲)のボーカルを聴いた感じと同じ音量感に揃える

という過程で仕上げています。ふつうのボーカル入り楽曲に比べて、RMSメーターが -3.0 ~ -5.0 くらいになる感じです。

ではそこからボーカルを抜いただけの設定がいいんじゃないの、と思ったのですが、聴いた感じがちょっとものたりなくなりました(過去曲をつかってカラオケを作成し、他楽曲と聴き比べた結果)。

市販の音源と比較してみる

ということでリファレンスを使って研究してみます。参照した音源は、ウチのCD棚でまず目に入った、TVアニメ「PERSONA ~trinity soul~ 」のオリジナルサウンドトラックのDISC2に収録されていた「trinity soul ~piano ver.~ 」です。適任な曲ですね。

作曲者の岩崎琢さんの楽曲からはいつも未知の音楽を聴く喜びとインスピレーションをいただいています。このPERSONA3アニメのサントラも最高です!

ピアノソロ曲はRMS -15.0 くらいが良さそう

↑自分の曲のプロジェクトにリファレンス音源を読み込んで比較していきます

まず気になる音圧チェック。 WAVES PAZ Meters で調べてみると、RMSの値が、波形の大きなところで -16.0 くらいでした。ほほう。

↑ピークが-16.0、発音中は-18.0を主に行ったり来たりしていました

次に自分の曲と比較していこうと思ったのですが、曲が違うと比較し辛いと感じましたので、リファレンス曲の冒頭部分だけを耳コピしました。楽しかったです。

音源自体の差もあると思いましたが、そこはEQで近づけることに。リファレンスはひょっとして生楽器の演奏??……CDのクレジットによると岩崎琢さんご本人の演奏のようですが、録音スタジオなどの情報からは生楽器かどうかは予想できませんでした。ウェブに情報がないかな、と思って「岩崎琢 インタビュー」で調べてみましたら、ご本人による「インタビュー嫌い」というタイトルのブログ投稿がありました笑。

ピアノソロ曲では中低域も豊かに

↑アナライザーを確認しながらEQで似せていく

  • 左上がSYNTHOGY Ivory で打ち込んだ自作曲へのEQ。
  • 左下はそのEQ後の WAVES PAZ Analyzer
  • 右上はリファレンスのアナライズ。

だいたい近くなったかな……演奏のタッチや曲の音域の問題でもありますが、意外にハイが少なめでまろやかな音質。敢えて言えばこもった音です。

ふつうのポップス編成だとハイパスやら中音域けずったりやらするところですが、ピアノソロ曲では確かに中低域が豊かな方がリアルなようにも感じます。

リバーブだけが情報量を追加するチャンス

また、リファレンスにはかなり深めにリバーブがかかっているのも印象的です。定番なところで WAVES Renaissance Reverb のプリセットをいろいろ試して聴き比べましたところ、「The Church」というプリセットが最も近いという結果に。

単純にHall系かな、と思ったのですが、Church系の方がより余韻の深さと厚みがありますね。

好みもあるでしょうが、ピアノソロ曲はどうしても音韻的に情報量が少なくなるでしょうから、音響的な情報で補うために、リバーブは特徴ある設定を派手にかますのが良いのかもしれません。ふむふむ。

マキシマイザーが反応しなくても気にしない

↑定番のL3のみを使用するとスレッショルドは -6.5 という結果に

結局、自分のオリジナル曲には、EQをより好みの設定にして、軽くコンプやアナログモデリング処理をしたのち、定番の WAVES L3 だけでRMS -16.0 付近を目指したところ、アッテネーションは全く反応しない……。アッテネーションは有って無ぇーようなもんでしたでしょん……。

といったところで、無事に、パッと聴いただけだと「岩崎琢さんと同じ環境で録音したんじゃないの??」は言い過ぎですけど、それにかなり近い音源になりました。

出来上がったオリジナル曲はaudiostockに出せればと思っていますので、審査に通りましたらここを更新します。

(後日追記)audiostockに3曲公開されましたhttps://audiostock.jp/audio/183931 ほか

作業ネタ、久しぶりでしたが、また何か研究しましたら報告します。


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