アルバム『Miyazaki Smooth』収録曲についての本人解説です。
Track 1 : Miyazaki Smooth Intro ~ Nishitachi Drunkards
バーやレストランでピアニストが演奏しているような定番の「カクテルピアノ」スタイルの演奏で幕を開けます。
「Nishitachi」は宮崎市の繁華街「西橘通(にしたちばなどおり)」の通称。宮崎市の夜といえば、宮崎観光ホテルでの親戚の結婚披露宴のたびに前泊して夜のニシタチに繰り出し、ベロンベロンになるまで飲んだという思い出が真っ先に頭をよぎります。親戚の結婚式はめでたいだけでなく、自分にとっても仕事を完全に忘れて開放状態になれる日です。道路沿いのベンチで眠ったこともありました……。
というわけで、アルバムの1曲目を飾るのは『西橘通の酔っぱらい』です。
酔っ払いの千鳥足を表現したドラムのビートは通称「5つ打ち」と呼ばれる「Jearsy Club」というスタイルですが、これはここ最近の音楽シーンの流行を反映しています。仕事でも散々作りました。そこにトラディショナルジャズのビートサンプルを重ねて賑やかしています。あまりトラディショナル感の色は出ていませんが、何を隠そうトラディショナルジャズの定番ビートのひとつ「Second Line」も「5つ打ち」ともいえるビートですので、相性いいだろうなー……と思ったのでした。西橘通と Bourbon Streetのコラボですね。
「最近の音楽シーン」といえばもう一つ、令和初期を象徴する「丸サ進行」も反映しました。5つ打ちと丸サ進行を作り続けた日々を生涯忘れないだろう……。この曲を聴けばいつでも「この時代」を思い出せる、そういう曲になったと思います。
後半のモダンなエレピソロは「F」と「G」という2つのトライアドのアルペジオを交互に弾くだけに終始したもの。妻に聴かせながら「このソロ、『ファラド』と『ソシレ』だけなんだよ、すごくない?」と言ったら「6音も使ってるのか、普通じゃん」と言われました。
Track 2 : Aoshima Walkways
ぼくの、いえ、すべての宮崎県民の最推し観光スポット「青島(あおしま)」。
海岸から続く短い橋を渡って青島へ歩いていけば、左右からバイノーラルに聞えてくる波の音が南国気分を増幅してくれます。
2曲目は『青島への散歩道』。楽し気に目的地に向かう雰囲気を感じていただけましたら嬉しいです。
超定番感あるサウンドはCメジャーで「IIm7 – V7 – I6 – VI7」をやっているだけです。やはりツーファイブは大事なんですね。
キメの部分は学生時代に死ぬほど聞いた西海岸ファンクの重鎮・Tower of Powerの名曲『I Like Your Style』をオマージュしました。
また、リラックスした雰囲気の演出のため(もしくは思いのほかオケが厚かったため)ソロは全編右手だけで弾いています。
Track 3 : Strangers on the Island
その青島、個人的な第一印象は「変な島!」でした。
大昔に海から流れ着いてきた熱帯地方の植物の種が原因らしいのですが、島全体を日本らしからぬ植物でおおわれています。その風貌がある意味では神秘的でもあり、青島神社の存在も相まってパワースポット的な何かを強烈に感じる場所です。
3曲目はこの青島を表現した『島の異邦人たち』です。2曲目に続いてのド定番スムースジャズサウンドですが、青島の「変」さ具合を表現するために「あまり普段聞かない感じの転調」をテーマにしました。
ふだん曲を作るときは感覚的に転調をやっていますのであまり深く考えていないんですが、あとあと自己分析してみるとGとE♭とCが出てきていますね。インコグニート的な雰囲気を意識したような気がします。
同じ音の連打が多いメロディは島にポツポツと変な植物が生えている感じを表現しました。
ところでこの曲は全体的に、学生時代に死ぬほど聞いたカリフォルニアスムースジャズギタリストのとある曲を思い出しながら作りました。ですが、そのギタリストの名前も曲名も思い出せないんです。iTunesで購入したものをヘビロテしていたのですが、PCがクラッシュしたときにデータは消失し、時間がたちすぎたのか自分でアカウント情報を変えたのかiTunesの購入履歴にも出てこないという……こういう曲けっこうたくさんあるんですよね。もしお気づきの方がいらっしゃいましたら「この曲じゃね?似てね??」と教えていただけましたら嬉しいです。
Track 4 : Chilling by the Cocos
宮崎といえばどこか執拗な感じで植えられまくっているヤシの木が風物詩になっています。昔は「日本なのに海外っぽさアピール無理しちゃって…」などと思っておりましたが、青島の植生にまつわる歴史を知った今となってはたいへん申し訳ございませんでした。
ぼくも大好きな青島海岸でもヤシの木が大いに南国感を演出しています。最近では今風の海の家やらキッチンカーやらおしゃれなレストランやらもできて賑わっています。いいぞ宮崎。
そんな『ヤシの木のそばでリラックス』というのが4曲目のテーマです。レイドバックしたローファイビートにのせて、Rhodes(エレクトリックピアノ)の明るくブルージーなメロディで脱力感を演出しています。
この曲ではジャズのメジャー系ブルースの音使いに終始しています。スライドで半音をぶつける?みたいな奏法を多用していますが、このメジャー系ジャズブルースの「ひょうきんな感じ」が昔から好きです。伴奏は別録りでループさせていて、メロディはほぼ右手だけ。まさしく「Chilling」しながら演奏しました。
余談ですがこのアルバムのラフミックスを車で聴いていたところ、この曲が娘(5歳)の一番のお気に入りだそうです。「あつ森」に登場するBGMに似た雰囲気の曲があるんだそうで。
Track 5 : Surf Watching
宮崎は日本有数のサーフィンスポットとしても知られています。青島海岸も一年を通して波に挑む青年男女でにぎわっています。もっと南下した日南海岸の南の方にも絶好のスポットがあるようで、そこはほんとに「サーフィンするために来た人が泊まるだけ」の宿の他は何もない、みたいな秘境になっています。本気度がいいですよね。
サーフィン未経験のぼくがいつも憧れのまなざしで『波を見ている』という5曲目は、シンプルな4つ打ちのビートに「波」を表現したメロディをのせています。
淡々と繰り返し押し寄せる波のイメージとして、ベースもシンセベースをアルペジエイターで鳴らしています。個人的には「こんな簡単でいいのだろうか」と思わなくもなかったのですが、結果としてアシッド感マシマシになったといいますか、モダンなサウンドにアコースティックピアノの音色が絶妙なミスマッチ具合で気に入っています。
サーフィン、40代のうちに経験したいです。高校時代からの盟友である宮崎在住の作曲家・吉田大致氏もサーファーですし、先日一緒に飲んだパパ友もサーファーということですので外堀は埋まってきているはず。「ガラじゃない」と言われそうですが……ぼくもそう思います。
Track 6 : Coastline Stomp
海といえば季節は夏、でしょうが、春や秋もとてもいいものです。夏と違って人が少ないうえに、波打ちぎわで足を濡らす程度なら寒くもない。人がいないまっさらな砂浜を視界に独占しながら、波の音に埋もれて無心になるとリラックスできることこの上なしです。
6曲目は『波打ちぎわでステップ』という曲名にしました。軽快に歩く海辺の爽快感をディスコビートで表現しています。
今回のアルバム収録曲はほとんどが「特に意識することなく勝手にできた」みたいな感じなんですが、この曲は「もう1曲、明るくてノリのいい曲が欲しい」と考えて、ウォーキング中に無理矢理テンションを上げながら作曲しました。
Earth, Wind & Fireの定番曲『September』が「テンポ感まんまだな」と考え、カウベルの4つ打ちを真似してみました。カウベルの4つ打ちなんて数十年ぶりにやったかもしれません。こんな手軽にゴキゲンな感じになるなら、人類はもっとカウベルを4つ打ちするべきですね。
この曲が出来立てのときは「ちょっとメロディがわざとらしすぎるかな~」とも思ったのですが、家族や友人に聴いてもらった感じでは評判が良かったので今では大のお気に入りです(素直な性格)。
Track 7 : Back Home West
さて。ここまで意気揚々と宮崎(宮崎市)について語ってきましたが、実はぼくの自宅は宮崎県三股町という、宮崎県南部の内陸にある盆地の町です。笑。海ないのかよ。……宮崎市まで車で40分ほどですのでまあいいでしょう。
というわけでアルバム最後を飾りますのは『西のわが家へ帰ろう』というジャズバラードです。
交差点で収録したSEから始まるこの曲では、宮崎市に出て一日遊んだあと、もう日が沈み切ろうとしている黄昏の中を西のわが家に向かって帰る様子をイメージしています。都城・三股エリアに住む人の週末あるあるです。
ジャズバラードの定番的な奏法・ブロックコード奏法を織り交ぜることで、ループビートとのミスマッチ?感を増大させ、都会のサウンドっぽさを出すよう狙いました。
C調な親しみやすいメロディの一部は、実は高校の軽音部時代に先述の吉田大致氏を含めた3人でジャムセッションをしていたときの録音をモチーフにしています(したつもりです=カセットテープだったので25年以上きいていない)。ぼくにとって「家」とか「郷愁」とかを感じさせるメロディ「になったもの」と言えます。
以上です。ドライブやレジャーのお供に、ぜひ末永くお楽しみください。
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ピンバック: オリジナルアルバム『Miyazaki Smooth』をリリースしました | SOUND 1000 music production